ゆすらごの大パノラマ

  • ゆすらごは喫茶店だけど、町家という建物の特性上加わる様々な制限を最大に活かし、伸展させて意欲的にイベントを企画しているお店だと思う。店主黒田くんは自らも音楽家で、ここのところは新作をリリースしたばかりの Gofish トリオのチェリストとしてツアーに出ている。黒田くんとパートナーの翆娘ちゃんの渾身企画「大パノラマ」に行ってきた。
  • 会場は烏丸紫明にある紫明会館は昭和7年築のレトロビル。国の登録有形文化財にもなっている。この建物が面している紫明通というのが、碁盤の街には珍しく緩やかなカーブと中央分離帯に並木を備えた風通しの良いエリアで、会場の場所を聞いた時からすてきな予感に満ちていた。
  • 着いてみると建物は子どものころ書道教室に使われていた公民館を思い出すような造りだったけど、思いの外大きな講堂を備えていた。講堂だからちゃんとステージになってるのもいい。
  • 口火を切るのはトンチトリオ。朗らかなスティールパンと真っ直ぐな声を彩るピアノとウッドベース。ところが1曲でトリオ演奏は終わってしまい、その後は Gofish ショウタさんが全面参加の特別編成に。途中カバー曲として取り上げられたチャゲアスの曲がすごかった。ショウタさんにASUKAが憑依したかのような(本人曰く「ASU化」というらしい)。あっけにとられる。
  • 次は sweetdreams press からの新作を引っさげての風の又サニー。初見。ギターボーカル、バイオリン、ピアニカ、チューバと最小限のドラムキットによるバランスギリギリのオルタナティブ・ポップ。新譜は大好き sweetdreams pressからまもなく発売?わたしは会場でゲットしました。
  • moon face boys はいままで観たなかではいちばん良かったんじゃないかなー。ケイくんの紡ぐストレンジなメロディーがアメリカっぽい乾きを感じさせるのは落花生国の血か??こちらは手売りオンリーか、カセットテープでのリリースがヒッソリと……カセットプレイヤーをお持ちでない方にもデータを送ってくれるようなのでドント・ヘジテイト!
  • シャラズルタラリ、知らない人が聴くと盛大にハテナマークが吹き出ることまちがいなしのシンセ歌謡。しかしそのベースに打ち込まれた音楽群の深さ広さははかりしれない……なんて知識をあっさりうっちゃる間合い。オトナ力。
  • ゆうき、はオオルタイチYTAMOのあたらしいユニット名。伸びやかで美しいメロディとハーモニーとが芯のとおったエレピ、オルガンにアンカーされた凧のように高く遠く飛んで行く。
  • ここらあたりで日が暮れて来たところへうんとステージまで暗くして、Gofishトリオの演奏が始まる。アンコールまで含めて最新のアルバム『よかんのじかん』からのほぼ全曲?そしていくつか新しい曲と旧作も。『よかんのじかん』はそうとう聴きこんでたけど、最初に手にした時には少し驚いた。これまでのイメージと比べてビビッドで、メロウで、歌詞だってうんとロマンチックで。でも歌はますます確信に満ちて、コントラバスとチェロは「支える」のではなく寄り添いながらずんずん進んでいく。それが、ライブではよりはっきりと見えた。なんて大きいんだろう。ほんとにいい声、よく通る声、特に高音の伸びが以前より格段に良くなっている(たぶん「ASU化」のせい)。MCでショウタさんは「お客さんが入ると音がきれいになる」って云っていて、たしかにあの講堂でお客がいないと反響がたいへん、ということもあるとは思うんだけど、それと同時に、あの場にいたみんなが Gofishトリオと一緒に奏で、歌っているような気持ちになったと思う。それが「きれい」な音楽だったんだとわたしは信じてる。
  • 予感はしあわせな余韻となっていつまでもわたしの中で鳴っている。